IT企業における「専門業務型裁量労働制」とは?

裁量労働イメージ画像.JPG専門業務型裁量労働制を導入を検討する上で法令を十二分にご理解していただきたいため、見慣れない用語がたくさんでてきます。尚、本サイトはIT企業の人事労務に特化した情報をお伝えするため、IT企業にはかかわりが薄いと思われる箇所は割愛させていただきます。

   

<専門業務型裁量労働制とは?>

業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。(厚生労働省のホームページより抜粋)

  次の業務が対象業務として定められています。

1.新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務

2.情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であつてプログラムの設計の基本となるものをいう。(7)において同じ。)の分析又は設計の業務

「情報処理システム」とは、情報の整理、加工、蓄積、検索等の処理を目的として、コンピュータのハードウェア、ソフトウェア、通信ネットワーク、データを処理するプログラム等が構成要素として組み合わされた体系をいうものであること。
 「情報処理システムの分析又は設計の業務」とは、(i)ニーズの把握、ユーザーの業務分析等に基づいた最適な業務処理方法の決定及びその方法に適合する機種の選定、(A)入出力設計、処理手順の設計等アプリケーション・システムの設計、機械構成の細部の決定、ソフトウェアの決定等、(B)システム稼働後のシステムの評価、問題点の発見、その解決のための改善等の業務をいうものであること。プログラムの設計又は作成を行うプログラマーは含まれないものであること

 3.新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法(昭和25年法律第132号)第2条第4号に規定する放送番組若しくは有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律(昭和26年法律第135号)第2条に規定する有線ラジオ放送若しくは有線テレビジョン放送法(昭和47年法律第114号)第2条第1項に規定する有線テレビジョン放送の放送番組(以下「放送番組」と総称する。)の制作のための取材若しくは編集の業務

4.衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務

5.放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務

6.告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)

7.事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)

8.建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)

9.ゲーム用ソフトウェアの創作の業務

10.有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)

11.金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務

12.学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)

13.公認会計士の業務

14.弁護士の業務

15.建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務

16.不動産鑑定士の業務

17.弁理士の業務

18.税理士の業務

19.中小企業診断士の業務 

2.の用件に該当していればIT企業においても専門業務型裁量労働制を導入することが可能となります。

専門業務型裁量労働制を導入するメリット

要件を満たした上で、専門業務型裁量労働制を導入するすると、労使協定で定める時間だけ労働したものとみなされます。

「みなす」とは、仮に1日8時間の労働時間を定めた場合には、9時間働いても、7時間働いても「1日8時間」働いたことになります。1日の時間外労働がある程度平均化されている場合には、専門業務型裁量労働制を導入することによって、労社員が仕事をしやすい環境を整えることが可能になってきます。みなし労働以外での労働時間管理の場合には、単純に働いた時間分だけの時間外労働分の割増賃金の支払いが必要です。専門業務型裁量労働制は、みなし労働なので技術力に差がある場合には、テキパキと業務をこなす技術者ほど仕事が早く終了し、遅い技術者ほど夜遅くまで仕事をすることで割増賃金に関し不公平感が生じることもあります。この点を解消する点で、専門業務型裁量性を導入するメリットがあるといえます。

*くれぐれも残業代のカットのみを目的として導入するのはやめましょう! 

専門業務型裁量労働制は、長時間労働につながりやすいので、導入時は「実情の時間外労働がどの程度あるのか?」そして、「対象となる業務にだいたい何時間くらい要するのか?」などを検討した上で導入してください。詳しくは、次以降で解説します。

専門業務型裁量労働制の導入の仕方

専門業務型裁量労働制を導入するにあたっては、次の手順で進めていきます。

1.労使協定の締結

当該事業場の労働者の過半数が加入する労働組合、ない場合には、労働者の過半数を代表する者との書面による協定によって締結。労働組合がない場合がほとんどなので、多くの企業では、労働者の過半数を代表するものとの書面によって締結しています。

2.労使協定で定めること

@対象業務Aみなし労働時間B対象業務を遂行する手段及び時間配分の決定等に関し、対象業務に従事する労働者に具体的な指示をしないことC対象業務に従事する労働者の労働時間の状況の把握方法と把握した労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的な内容D対象業務に従事する労働者からの苦情の処理のため実施する措置の具体的な内容E有効期間FCとDに関し、把握した労働時間の状況と講じた健康・福祉確保措置及び苦情処理の記録がを協定の有効期間中及びその期間満了後3年間保存すること

3.みなし労働時間とは?

(みなし時間は1日単位で協定する)

労使協定で、1日9時間労働するものとみなすと定めれば、たとえ現実に10時間労働した場合でも1日9時間働いたものとしてみなされる。逆に1日8時間しか労働しなかった場合であっても1日9時間労働したものとみなさてれ労働時間が計算されることになります。

 (深夜・休日労働等はみなしに含めるのか?)「休憩時間・深夜業・休日・育児介護労働者の時間外労働規制」に関する規定にまでみなし労働が適用除外になるわけではありません。つまりこれらの時間は、別途把握しなければなりません。

4.健康・福祉確保措置及び苦情処理措置を講じる

厚生労働省のパンフレットには次のように書かれています。 

対象労働者の勤務状況を把握することが必要です。使用者が対象労働者の労働時間の状況等の勤務状況を把握する方法としては、対象労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間在社し、労務を提供し得る状態にあったか等を明らかに得る出勤時刻または入退出時刻の記録等によるものであることが望ましいことに留意することが必要です。 簡単にまとめると、みなし労働だからといって何も時間管理をしなくてはよいわけではありません。長時間労働に陥りやすい制度なので、健康面等に配慮して適切な労働時間管理を行う必要があります。 (定め方例)2ヶ月に1回所属長が健康状態についてヒアリングを行い、必要に応じて特別健康診断の実施や特別休暇の付与を行う。

5.苦情処理措置

厚生労働省のパンフレットには次のように記載されています苦情処理措置についてはその内容を具体的に明らかにすることが必要であり、例えば、苦情の申し出の窓口及び担当者、取り扱う苦情の範囲、処理の手順、方法等を明らかにすることが望ましいことに留意することが必要です。この際、使用人や人事担当者以外の者を申出窓口とすること等の工夫により、対象労働者が苦情を申し出やすい仕組みとすることや、取り扱う苦情の範囲については対象労働者に適用される評価制度、賃金制度及びこれらに付随する事項に関する苦情も含むことが望ましいことに留意してください。 簡単にまとめると、やはり長時間労働に陥りやすいので、現状の不満や問題点をきちんと言える窓口を社内に設け、適切に運営することが求められています。

一定額の割増賃金の支払いについて

人件費を抑制する目的で割増賃金を一定額で支払ってませんか?

適切に支払われていれば問題ありませんが、多くのIT企業は不適切な場合が多く、退職時などに“未払い残業の請求”としてトラブルになる場合が見受けられます。

一方で、ここ最近人材の流動が鈍化を懸念し、また、エンジニアを確保する目的から、給与体制の見直しと行い、その結果として一定額の割増賃金の支給を廃止するIT企業も増えています。

もし今現在一定額の割増賃金の支給を導入している場合、または今後導入予定の場合には、次の要件を満たしているかどうかをまずは確認してください。

 

<チェックポイント>

1.割増賃金の単価が適切に計算されているか?

 (月給の場合の計算方法例)

  ・1日の所定労働時間 8時間

  ・年間休日 108日

  ・月平均の労働日数 21.41日

  ・月平均の所定労働時間 171.33時間

  ・月給 350,000円(割増賃金から控除する手当がないものとする)

  

  割増賃金の単価=350,000円÷171.33=2,042円 

2.就業規則等に○○手当が一定額の割増賃金であることが、明記されているか?

3.一定額の割増賃金が何時間相当の法定時間外労働であるかが、就業規則等に明記されているか?

4.実際に労働した時間が、一定額の割増賃金額を超えている場合には、差額を払う規程になっているか?また実際に払っているか?

専門業務型裁量労働制を導入した場合の一定額の割増賃金の支給について

業務の遂行に必要な時間を1日「9.5時間」と定めた場合には、1日「1.5時間」の時間外労働があるものとみなされます。よって、1日1.5時間の割増賃金の支払いが必要になります。

では、次のケースにおいてはどのように計算すればよいのでしょうか?

 

・1日の所定労働時間 9.5時間

 ・年間休日 108日

 ・年間を通しての最大所定労働日数 23日(労使協定で定める)

 ・月の総みなし労働時間 218.5時間

 ・月給 350,000円(割増賃金から控除する手当がないものとする)

  

 

 1ヶ月の割増賃金=350,000円÷218.5×0.25×23=9,210円